Ⅶ 認知症高齢者への対応(声の掛け方)

認知症の利用者で「家に帰りたいんだけど」「お金が無くなった」と繰り返し訴える方は珍しくありません。


そんなとき「今は家に帰れませんので、まだここに居てください」とか「そんなことないですよ。

元からお金を持っていなかったじゃないですか」と誤った説明をしている職員はいませんか?


たとえ認知症の症状が進行しても、介護をする人が認知症の特徴をよく理解したうえで、あたたかい声をかけていくことで、認知症の人も感情が乱れて異常な行動をとることが減り、安らかな状態を維持していくことができるものです。


ではあたたかい声をかけるというのはどういうことをいうのでしょうか?


認知症のお年寄りの対応で心がけることは、「お年寄りの自尊心を尊重すること」です。

お年寄りを子どものように叱りつけたり、矛盾している会話を頭ごなしに否定したりすると、お年寄りは自尊心(プライド)を大きく傷つけられます。

 

この自尊心を傷つけない接し方はごく当たり前のことでもありますが、その当たり前のことが日常業務の中で忘れられていることが少なくないのです。

 

本編では認知症の方に多くみられる具体的な言動に対して、お年寄りの自尊心を傷つけないでどのように対応、声かけするべきなのかを解説しています。


対象の利用者によっては臨機応変に声掛けの内容を変えて応対しなくてはなりませんが、明らかに間違った対応だけは避けたいものです。


認知症高齢者の言動に対しての基本的な声掛け方法

 ・毎日のように「あなたどなたですか?」と尋ねるとき  

 ・着替えや歯磨きなど、しなければならないことを忘れてしまっているとき

 ・何か物の置き場所を忘れていまい、紛失してしまったとき  

 ・同じことを繰り返して言うとき    ・同じことを繰り返して行うとき

 ・食べたばかりなのに「まだ食べていない」と言うとき 

 ・「食べたくない」と食事を拒否しているとき 

 ・何でも口に入れてしまうとき

 ・トイレではない場所で放尿するとき 

 ・失禁してしまったとき 

 ・トイレの場所がわからないとき

 ・オムツを外してしまうとき ・便をいじってしまうとき 

 ・介護を嫌がるとき    ・入浴を嫌がるとき 

 ・バスの送迎やレクなどへの参加を拒否するとき

 ・「財布を盗まれた」と訴えるとき 

 ・用が無いのに夜中に叫ぶとき

 ・無いものが見えたり、聞こえたりする言動があるとき 

 ・作り話をするとき

 ・「妻が浮気している」などとあり得ないことを信じ込んでいるとき

 ・「うるさい」と大きな声で叫ぶとき  ・暴力をふるうとき 

 ・徘徊するとき     ・「家に帰りたい」と帰宅願望を訴えるとき 

 ・話のつじつまが合わないとき          ・わけもなく急に泣き出すとき 

 ・夜間と昼間を取り違えて騒ぎ廻るとき

 ・何でもかまわずに集めてしまうとき    ・性的な言動があるとき

 ・すぐに裸になってしまうとき      ・認知症対応において心がけたい原則